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2015-06-20 10:33 | カテゴリ:毎土このせつ企画
当日更新 

お題は 「紫陽花 カッパ 父」

父の日には関係ない話←

庭先に植えられた紫陽花を眺め思い出すのは幼い頃のあの子とそしてあの子の大切なお嬢様。

この紫陽花をここに植えた頃を思い出し思わず笑みがこぼれた。


「ししょー!お水が!お水がおちてきました!お出かけできません!」

刹那の悲鳴にもとれる報告が廊下に響いた。

「雨か……ふむ」

刹那が不安そうに外を見つめる。

「今日はこのちゃん……えっと、きょうかいにいくはずだったのに……これじゃこのちゃんにあえへん……」

今日は呪術教会に赴く予定であった。

いつもであれば刹那も共に行くのだが例外が一つだけあった。

それは雨の日。

刹那は雨の日に出掛けるのが苦手であった。

生まれによる体質も関係するのかと最初は思っていたが……。

雨に濡れるのが苦手であるようだった。

そして、幼さゆえに傘を差すのも苦手であった。

気が付けばすぐに傘が傾いてしまい頭から雨を受けていることがよくあった。

剣の修行を始めたばかりだということもありまだ長い時間傘をまっすぐに保つ腕力が育ってないのだろう。

かといって私と共に傘に入ったとしても身長差がありすぎて意味はなさない。

修行の一環として傘を自分で持たせることも考えたが……如何せん協会までは結構な距離があるのだ。

子供の足で山道を約一時間。

この距離を刹那は文句も言わずしっかりと歩いている。

そのうえで一時間傘を差すのはさすがに無理があるのも仕方がないだろう。

大人なら三十分とかからない距離だが、子供の歩幅は狭い。

梅雨入りしてしまった今、雨が降らない日は少ないと言えるだろう。

これは刹那にとっては大問題だ。

修行に真剣に取り組み、時折訪れては会える初めての友人と呼べる相手と遊ぶことをどれほど楽しみにしているのか。

それを雨に阻まれてしまう。

どんなに努力をしても雨をかわすことはできず、ひどい時にはお屋敷に着いたその場で熱を出し倒れてしまうこともある。

せっかく会えたのに遊ぶこともかなわないとなると余計に雨が嫌いになるのだろう。

恨めしそうにずっと空と庭先を睨み付けては子供に似つかわしくない溜息をついている。

「刹那。そんな顔をするな。今日はお前に秘策を授けてやる。出かける準備をしなさい」

そう声を掛けると弾けるようにこちらを振り返り期待に満ちた目を向けてくる。

「おいていくぞ」



急いで支度してきた刹那は完全武装だった。

足元には子供用の水色の長靴。

膝より少し長い丈の黄色い雨カッパを装備しフードもしっかりとかぶる。

念のためと言わんばかりに撥水スプレーを施した薄手の手袋もはめてやった。

首元には手ぬぐいを巻く。

これなら大丈夫だろう。

嬉しそうに飛びはねるひよこのカッパを着た刹那は雨の中に飛び出した。

「ししょー!早くいきましょう!」

「現金な奴だ」

濡れないと分かると嬉しそうにはしゃぎまだかとせかしてくる。

傘を差し刹那の手を取り呪術教会を目指して歩く。

普段は見られないほどのはしゃぎようの刹那に手を引かれ傘が傾いたりとせわしない。

これは私もカッパか何かの方がよかったかもしれないな。



濡れるようなことはさすがになかったがいつもより少し疲れた気分で訪れたお屋敷には刹那に負けず劣らずの嬉しそうな木乃香お嬢様がおられた。

「せっちゃん!せっちゃんや!今日は来てくれたんやね!」

「うん!あんな、このちゃん、かっぱ着て来てん!これで濡れへんよ!」

「すごいな!ええなぁ!うちもひよこさん着たい!」

大興奮の二人の声は屋敷中に響いたようで。

「どうしたんですか木乃香。おや、刹那君、かわいらしい格好ですね。よく来てくれました」

長が顔を覗かせた。

会釈であいさつを済ませ刹那とお嬢様に視線を合わせるように膝を折る姿からはとても想像できない程強い方だ。

「あ、父様。あんな、うちもカッパが欲しい!そしたらうちもせっちゃんと雨の中お外出られるやろ?」

「そうですね……あまり長い時間雨の中に出るのはよくないですが……。そうだ。今度雨が降るまでには用意してもらいましょう。その時は二人とも手伝ってもらいたいことがあるので」

なにかを思いついたように長は笑い二人の頭を撫でた。

数日後再び雨が降り、お嬢様も念願のカッパを手に入れた。

刹那とお揃いだ。





二匹のひよこが庭先にこの日植えたのは紫陽花の苗。

数年経過した今も色とりどりの花を咲かせて皆を喜ばせてくれている。

「同化されましたか?」

「いえ、今日もきれいな花を咲かせているなと」

「あぁ、そうですね。毎年頑張ってくれています。そして、これからまたあの娘達が植えてくれる紫陽花もきれいに咲いてくれるでしょう」

視線を向けた先には大きく育った二人の姿があった。

流石にもうひよこを身にまとってはいないけれど。

相変わらずカッパを楽しそうに着込んでいるのだから何とも言えない笑みが自然とこぼれてしまった。






次回は 「割りばし かざぐるま ちらし寿司」でっす
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